滋賀県では今年度、将来に向けた課題や目標を県民のみなさんと共有し、みんなの力を合わせ滋賀の未来をつくっていくための将来ビジョンである次期“滋賀県基本構想”(2019年度~2030年度)が策定されました。
滋賀県もすでに人口減少の局面に入っており、行政だけでは取組を進めていくことは難しいことから、多くの県民のみなさんと力を合わせて活動する『協働』をさらに進めていくことが重要であり、どのように進めていくべきかが模索されはじめています。
「未来の滋賀とつながる!未来ワーキング会議」が開催!
その一環として今回、行政と県民のオープンな話し合いの場「未来の滋賀とつながる!未来ワーキング会議」(以下、未来ワーキング会議)が開催されました。
未来ワーキング会議では、次期基本構想に掲げられている要素の中から3つテーマを選定し(リカレント教育/多文化共生/起業促進)、それぞれ3回の県民との話し合いを2018(平成30)年12月〜2019(平成31)年2月にかけて実施。
メンバーは、それぞれのテーマに関係する県民(大学の専門家や、テーマの当事者等)や、テーマに関係すると思われる県庁各課、外郭団体のメンバーなど。各テーマ7〜10名集まっていただき、課題の本質や実態に踏み込んだ活発な意見交換がされました。
「しがと、しごと。」では、同会議での議論の模様をお届けしていきます。
テーマ①:「リカレント教育」について
「リカレント教育」とは、生涯を通じた学び直しのこと。超高齢社会における生産年齢人口の減少、IT技術の進歩、パラレルキャリア(副業/複業)の台頭などが取り上げられる中、社会人になってからの学び直しの機会の創出が必要になってきました。
今後ずっと一つの仕事をし続けるだけではなく、スキルアップや社会との接点を広げるためにも、様々な視点で社会に出てからも学び直しをしていくことが、ますます重要になっていきます。まだ抽象度が高く、プレイヤーも少ない本テーマについて、大学教授や、送り出す側の企業担当者の方、また学び直し経験者の方が参加され、それぞれの立場から議論を深められました。
リカレント教育について、県として深く議論をしてきたことはこれまでないとのこと。現状の認識の共有や、リカレントといってもどういった方向性があるのか、そして滋賀におけるリカレント教育そのものの定義をどうするかについて、ゼロから議論されたことは大きな成果と言えます。
さらに、学び手の気持ちだけではなく、受けいれる教育機関の立場や現状、また送り出す企業のリアルな現実などについても意見交換され、有意義な時間となりました。
最終的には、リカレント教育の方向性は、内容や対象者によって、3方向あるのではないか、という話に。その上で、それぞれを推進していくためには「行政がどういうことに取り組めばよいのか」の整理がなされました。
今後、この議論をきっかけに、実際に業務として本テーマを取り上げていく主幹部門を設定して、推進していく体制を早急に整備することが必要だと感じました。
テーマ②:「多文化共生」について
永住資格を持って滋賀に住んでいる外国人の方が、言語や文化の壁を超えて、日本の方と遜色ない生活を送るために必要なことはなにか、ということについて話し合われました。市町の担当者、読み聞かせなどの教育活動をされている方、町内会長、企業経営者など、それぞれ外国人の方の多い、組織の運営者たちが集まりました。
多文化共生のテーマは幅も広く課題も山積している中、解決のためのプレイヤーも滋賀には多数いらっしゃるということがわかりました。と同時に、それらの人やサービスへのアクセスを「当の外国人の方が知らない」という現状もあることがわかり、情報提供をどのように進めるべきか、ということに深い議論が交わされました。
また外国人の方の課題として話をしていくと、雇用や社会保障の問題など、日本人の方にも同じ課題を持っている人たちが一定いるということになり、これからの社会システムそのものの課題として向き合っていく必要があるのではないか、ということも共有されました。
最終的には、行政として出来ることも具体的なレベルでたくさん提案されましたが、何より印象的だったのは、こういった課題を外国人居住者の方も交えて一緒に解決していくような場づくりを引き続き持ち続けたい、とそれぞれの立場のところでお話いただいたことでした。
町内会や企業など、個別ではありますが、先進的に事例をつくっていってもらうことで、皆が取り入れられる仕組みを作り上げてもらい、それをシェアしていくような形が取れれば良いなと感じました。
テーマ③:「起業促進」について
「滋賀県で、起業がしやすい(or 滋賀は起業が活発である)という雰囲気を醸成するには?」というテーマで、滋賀で実際に起業した方、起業のアドバイスや資金面でのサポートをする方、大学で起業をテーマに研究している方、高校の進路指導の先生などが参加されました。
まずは、「滋賀は起業率が低い」というデータもある中、なぜそうなっているのかの原因にそれぞれの見解を出してもらいました。
全体的に共有できた意見としては「起業しやすい雰囲気」を皆で創っていく必要がある、ということ。どうしても雰囲気とか空気感というと分かりにくいものですが、地道な活動によって、全体の雰囲気は変えられるのではないかという、前向きなまさに「雰囲気」で皆さんの意見がまとまっていたのが印象的でした。
それぞれの立場での2030年の理想像を出し合ってみると、挑戦と失敗への理解を促進するための教育分野から出来るアプローチはあるのではないか、という指摘がいくつかありました。また伴走型支援として、気持ち面のサポートと、セーフティネットのような支援策の充実という意見も出てきました。
最終的には、「起業の雰囲気をつくる」という意味で、面白いことが評価できたり、背中を押せるような起業アンバサダーの設置など、人を介した具体的な産学官での連携の話が出てきて、このワーキングの締めとなりました。
未来ワーキング会議開催のまとめ
それぞれに意義を感じられた、一連のワーキング会議。答えのない、大きなテーマを県庁の中だけで考えて実行していくのではなく、現場での実感や、リアルな課題と直面されている方の意見を聞くことで、今後の政策方針にも意味のある影響を持つような場であったと感じました。
簡単ではない場づくりにはなりますが、そこに力を注ぐだけの意味があるのが『協働』という取組みであると感じます。一人でも多くの県民の方を巻き込み、県全体で行政課題と向き合っていくような県政が進んでいくことを、「しがと、しごと。」としても願っています。
(文・しがと、しごと。編集部)