自分で選べたら、それでいい。居続けても外へ出ても、滋賀でおもしろいことはできる。(対談:『滋賀県Uターン物語』編集長 ×『しがと、しごと。』PJ代表)

Uターン物語

2018年5月、ちょっと変わったメディアが滋賀に誕生したことを、みなさんはご存知でしょうか?
その名は、『滋賀県Uターン物語』

一度は県外で仕事したり生活したりしていた人が、何かのきっかけで滋賀にUターンし、新しいチャレンジを始める。そんな動きが最近、少しずつ増えています。
彼ら “Uターン者” たちに注目し、そのストーリーを紐といていくメディアが、滋賀に生まれました。


https://u-turn.link/

『滋賀県Uターン物語』編集長は、中野龍馬さん。
Web制作などの事業を行う「ジャパニーズ株式会社」の代表取締役であり、湖南市のコワーキングスペース「今プラス」の運営者でもあります。

今回はそんな中野さんから、『しがと、しごと。』プロジェクト代表の北川雄士(Uターン者/株式会社いろあわせ・代表取締役)に声がかかり、ともに滋賀を盛り上げようとする2人の対談が実現しました。

対談のひとつのメインは、“Uターン者”である 北川へのインタビュー。その具体的な内容は、こちらの『滋賀県Uターン物語』の記事からご覧いただけます。(ポッドキャストで音声を聞くこともできます!)

このコラムでは、取材後のアフタートークでこぼれ出た2人の言葉も含めて、“滋賀ではたらく” ことについて、掘り下げてみたいと思います。

なぜ中野さんは『滋賀県Uターン物語』を立ち上げたのか

中野さんご自身は、実はUターン者ではありません。高校を卒業後、県内の企業に就職し、その後独立。現在に至るまで、滋賀を出たことがないといいます。

しかし、Web制作など様々な仕事で県内の事業者とかかわったり、コワーキングスペースを運営する中で、多くの人との出会いを重ねた中野さん。

次第に、「滋賀で何か面白いことをしている人って、Uターンしている人が多いんじゃ…?」と感じはじめ、今回メディアの立ち上げを決意したそうです。

「人」の過去と未来に注目することで、これからUターンで帰る人達、または帰ろうなんて思ってなかった!という人に、地方で、更に地元・滋賀でこんな生き方ができますよ!と伝えられるプロジェクトにしていきたいと考えています。
https://u-turn.link/sub1

移住やUターンの、大きな壁になるのが “仕事” 。そこを伝えることで、滋賀で活躍する人をもっと増やしたいという想いが中野さんにはありました。

『しがと、しごと。』チームでも同じ課題を感じていますが、「滋賀ではおもしろい仕事ができない」と思い込んでいるために、滋賀で暮らすという選択肢をとれない人がいる。そんな現状を、少しでも変えたいと考えているそうです。

“滋賀ではたらく” ために、一度外に出るべきか、残るべきか

中野さんがこの日一番したかったという話は、今の若い人たちにとって、「滋賀を一度出るという選択をすべきかどうか?」ということでした。

僕は、一回も滋賀県を出たことがないんですよ。ただ今この歳(31)になった時に、3年とか4年は地元から離れて、過酷な場所だったりとかで、新しい知見や技術を学んでおいた方が良かったな…と思ってるんです。

そう過去の選択を振り返る中野さんに対し、北川は「僕は正直、それはどっちでも良いと思ってるんですよね」と返します。

結局ほんまにそこでやりたいと思ってるんだったら、別に外に出ても中にいても、そこで貢献するってことはできるんです。けど「何かとりあえず、可能性を広げといた方がいいよね」ぐらいのリスクヘッジ的に考えてるだけやったら、たぶん東京行ったら飲まれると思います。

何か自分に強い想いがあって、そのための3年間やったら、それはそれで意味があると思う。でもそれぐらいの想いを持ってる人は、県内にいてもアンテナ張るし、県外との接点も作るんです。だから結論、どっちでもいいんじゃないかと。

「いま実際、中野さんみたいな人が滋賀にいることが、きっと本質じゃないですか」という北川の言葉に、中野さんもずいぶん恥ずかしそうにしていましたが、この指摘はたぶん “滋賀ではたらく” を考える上で、とても大切なポイントになりそうです。

大事なことは、選択肢を何となく増やしておくことではなく、その中から最後に決める本人が、自分で納得して選べているか。あるいは選んだ選択肢を、納得できるものにしているかが重要ではないかと…。

とはいえ今は、前者の「納得して選んでもらえるような選択肢」が、滋賀の中に見えづらいことも事実。それを見えるように・伝わるようにすることも、『しがと、しごと。』や『滋賀Uターン物語』の今後やるべきことなのだろうと、対談を通して見えてくるものがありました。

死なないし、大丈夫。

今回の対談を持ちかけてくれた中野さん自身も、“滋賀ではたらく” 1人です。

中野さんが会社として請けている仕事量としては現在、「ありがたいことに結構いっぱい」だといいます。だからこそ上限を決め、それ以上にならないよう注意しているとのこと。

キャパ以上に仕事を請けちゃうと、次へのタネまきができないんですよ。単純なWeb制作の仕事は、5年先にはないかもしれないと思っています。そう思って、今プラスという場所をつくったり『Uターン物語』をつくったり、次へ向けていろいろ模索していますね。

時代の変化を視野に入れながら、それでも中野さんは悲観も楽観もせず、次へのタネを楽しみながらまいている印象でした。

またインタビュー中は繰り返し、自身のUターン遍歴を「とりあえず走った結果こうなってるだけ(笑)」「ぜんぜんキラキラしてないからね〜」と言っていた北川も、チャレンジについて最後にこう語りました。

僕はね、究極死なないと思ってるんです。チャレンジして上手くいかなかったら、「すみません、やり方が間違っていたみたいです」って謝ろうと。仕事だって、選ばなければいっぱいある。やりたいことはあるけど、そうじゃなくてもはたらく手段は滋賀にたくさんあるし。「何だってやるよ」と決めてますから、きっと大丈夫だと思ってます。

対談を終えて

『しがと、しごと。』と『滋賀Uターン物語』は、“滋賀ではたらく” ことについて、事業や企業にフォーカスするか、個人にフォーカスするかで異なるアプローチをしています。しかし「滋賀で豊かに暮らすための選択肢を、もっと見えるようにしたい」という点では、向いている方向はほぼ同じでした。

まだ立ち上がったばかりの2つのプロジェクト。それぞれの成長とともに、今後新しいコラボレーションも生まれていくかもしれません。

なによりも、「人同士のつながりを生み出すことで、滋賀を盛り上げていきたい」、滋賀という地でずっと事業を続けてきた中野さんならではの想いが、端々に伝わってくる対談でした。

(文・佐々木 将史)

 

・『滋賀県Uターン物語』 北川雄士 “働く≠夢を叶えてキラキラすること。やりたいこととか、よくわからんでもいいやん?”
https://u-turn.link/archives/story/12

・ジャパニーズ株式会社
https://japan-ese.info/

 

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