“就職活動”という言葉を聞いて、まず何を思い浮かべますか?
漠然とした不安。何をどこから始めていいか分からない戸惑い……これから最初の就活を迎える学生さんの中には、悩みを一人で抱えこんでしまっている人も、多くいるのではないでしょうか。
そんな方に伝えたいのが、このメッセージです。
──「もっと頼っていいんじゃない?」
2020年春に立ち上がったローカルジョブコレクションのテーマは、『超絶「頼れる」合説』。就活を自分だけでやろうとせずに、人や縁、直感に「頼って」最初の一歩を踏み出す、きっかけづくりの場を目指しています。
3月8日、新型コロナウイルス感染症の影響による合同説明会の延期に伴い、運営を担う株式会社いろあわせによって、学生・社会人を対象とするオンラインでの相談会が開催されました。
『しがと、しごと。』では、その模様を前後編に分けてお届けしていきます。(話し手:いろあわせ代表取締役・北川雄士/ファシリテーター:いろあわせ社員・馬場奏)
“地方で働く”はネガティブじゃない
馬場:最初に、なぜこの『超絶「頼れる」合説』が立ち上がったのか、北川さんから説明をお願いできますか?
北川:わかりました。まず、僕が就活について感じていることからお話しますね。
今の就活って、「それではダメだ」とか「こうあるべきだ」という情報がめっちゃある。これを見てくれる人の中にも、「周りの人と同じことやった方がいいのかな」と考えてる人は多いと思います。
でも、僕は人事や採用の仕事を14年ぐらいやって、多くの人に会ってきましたけど、「あなたの行動間違ってるよね」と感じたことって、正直あんまりないんです。
北川:なのに、みんなに合わせて行動すると何が起きるか。都会にある、“キラキラした会社”を志望する人が増えます。
そこの枠は限られているので、めっちゃ応募も殺到する。で、ほとんどの人が受からずに「私はどうしたらいいんだ」となるんです。そこから中小企業や地元の会社を仕方なく選んで、「私の人生終わった」なんて考えてしまうんですね。
でも、僕自身も滋賀へUターンしてみて思ったんですけど、地方にもおもしろい会社ってめちゃくちゃいっぱいあるんです。
ちゃんと利益も出して、福利厚生もしっかりしてる会社もたくさんありますし、働いてる人と膝を突き合わせて話してみると、実はめちゃくちゃ楽しそうにしてる。“地方で働く”という選択肢を見た瞬間に、「え?ここで働いて大丈夫かな?」と不安になったり、楽しそうに見えなかったりしちゃうだけなんですよ。
そのギャップをちょっとで埋めていければ……というのが、ローカルジョブコレクションで考えていることです。
失敗して当たり前。「健全」に焦りましょう
北川:で、最初に一つお伝えしたいのは、よく就活生を見ていると、「不健全に焦っている」人が多いかも、と思うんです。こんな感じに。
北川:周りを見て焦ったときに、「自分がダメだ」と思うと足が止まります。足が止まると人の答えに乗りたくなってしまうけど、それでは当然うまくいかない。で、余計に焦りがループしていくんですよ。
僕はそこで、「健全に焦りましょう」と言っています。就活なんて、みんな経験のないところからスタートしますよね。最初は足りないし、うまくいかない。中途半端で「ダサい」自分と、誰もが向き合うことになります。
でも、そんな自分を否定せず、まずは「受け入れてあげる」こと。そして、「最初の一歩を小さく踏み出す」ことが、実はすごく大事かなと考えてます。
北川:もちろんやっていくとですね、「ダメだな」と思うことはいっぱい出てくるわけです。10あったら、たぶん8か9ぐらいは失敗する。ただ、1か2ぐらいは「やって良かったな」って思うことが絶対あります。
小さな成功体験に目を向けてあげて、そこを楽しむようにもう一歩踏み出すんですね。すると、だんだんとできることが増えていきます。
行きたい業界や企業がない場合は?
馬場:視聴者からも「働きたい業界がない」「行きたい企業がない」という質問が来てるんですが、今の話はその答えになりそうですね。
北川:そう。まずはどこでも構わないので、とりあえず一度話を聞きに行ってみてください。何となく気になる言葉で検索して一番上に出てきたところとか、就職サイトやカタログをパッと開いて出てきたところとか。
絞ろうとすると迷っちゃうので、とにかく動く。最初から一歩目をキレイに出そうとしないことが、すごく大事です。
もちろん、行ってみたら「何でうちに来たの?」って企業さんからは聞かれます。でも、「すみません、よく分かってないんですけど、何となく来ました」となっても、企業さんからすれば十分「来てくれてうれしい」わけですよ。
僕はそれでいいと思ってて。
北川:よく勘違いされるんですが、企業として採りたいのは、“自社で活躍してくれて、ちゃんと利益に貢献してくれる人”。決して、“志望動機がきれいな人”ではないんです。
「うちの仕事はこんなので、知らなかったと思うけどこんな社風なのね」
「ちなみに、こうやって教えてからこんな感じで成長できるし、こんなやりがいも得られると思うよ」
……っていうのを、企業さんはちゃんと教えてくれます。それを聞いていけば、「ああ、そういうことやったら、私頑張れるかもしれないです」となるかもしれない。
企業さんにとっても、学生のエピソードを聞いて「ああ、この子うちでやったらたぶん伸びるな」と感じることがあります。別に志望動機がなくても業界研究をしてなくても、自社の仕事が「できそうだ」と思ってもらえたら、内定をくれる企業は必ずあると思います。
特に今年は学生にとってすごくチャンスです。いま合同説明会がどんどん無くなってるので、自分で連絡して「会いたいです」「会社見学させてください」という学生は、めっちゃ印象に残ると思いますね。
一番大切なのは、『素直さ』と『努力する姿勢』
馬場:でも、その企業で仕事が「できそうだ」という判断は、あくまで企業さんがしますよね。視聴者からも「仕事ができるかどうかが自分で分からない」という悩みが届いてますが、結局何を見られるんですか?
北川:まず土台になるのは、『コミュニケーション』(図の①)の一致です。価値観や相性がズレていると、そもそも相手が求めているのじゃないので、空回りになってしまう。まずは、ここが前提条件となります。
北川:その上で、実は一番大切なのが、『素直さ』と『努力する姿勢』(②)。僕が新卒採用でどこを見るかといえば、究極的にはここだけです。
目の前の人の話をちゃんと素直に聞く。自身の考えも持ちながらも、まずは真面目にしっかりと受け止め、教えられたことを自分のものにできる。その素養があることが、「ゼロから経験者になっていく」過程で、すごく大事なんですね。
多くの新卒の学生は、『スキルや働いた実績』(③)がない。だからこそ、「伸びしろ」があるということをどれだけ伝えられるかが、自分をPRする上でもすごく重要になると思っています。
『興味・意欲』と『適性』をフワッと知る
北川:あとは、「エースに育つ人材か」という視点では、『興味・意欲』と『適性』(④)が①②を満たす人を引き上げるドライバーになります。
『興味・意欲』がある、要はやりたいことが会社でできる場合、その人はギュンと伸びていきます。好きという感情は、やっぱりすごくエネルギーがあるので。
ただ、僕はこれを新卒の就活生に問うのはキツいと思ってるんです。なぜなら、本当にやりたいことが見つかってる人は、専門職とかに就いて、勝手にその道に進んでいきますよね?「やりたいことがよくわからない」から、みんな就活をしてるんです。
北川:なので、さっき言ったように、学生はとにかくいろんな会社に話を聞きにいくだけでいい。フワッとで良いので、自分の興味・関心を知れたら十分かなと思います。
もう一つの『適性』は、得意なこととか、合っているなって感じられること。特に、自分では無意識にやれている、けれど周囲から褒められるものほど、その人らしさが現れてることが多いですね。
ここもフワッとで良いので、適性が感じられるような過去のエピソードを見つけて、それをちゃんと伝える。そうすれば、あとは人事が勝手に「あ、この子こういう仕事やらせたらこんな感じで動いてくれて伸びるじゃないか」と想像してくれます。
北川:もちろん、人数の枠がある以上、最後は倍率との兼ね合いになります。繰り返しますが、みんなが受けてる人気企業ばかり受けてたらほとんどの人は落ち続けますし、自信もなくし続けてしまう。
そのとき、僕は中小やローカルの企業という選択肢がおもしろいと思うんですね。
なぜかというと、やっぱり「めちゃくちゃ重宝される」からです。任される範囲も広くなって、若いうちから挑戦させてもらえることも増えます。経験値がたくさん積めるし、都会の大企業に行くよりも伸びる可能性だって大いにある、僕はそう考えています。
<前編はここまで。後編では、もう一人ゲストをお招きして、視聴者からの質問に答えていきます>
(執筆/佐々木将史)