「琵琶湖では昔から、鮎(あゆ)と鴨(かも)は親戚みたいなもんなんです。魚屋で鴨が売られてたんですよ」。
そう話してくださったのは、長浜から合鴨ロース煮を全国へ届ける一湖房の社長、川瀬裕正さん。渡り鳥の越冬地でもある琵琶湖では、漁師さんの網に掛かる鴨も多いため、かつては川魚を扱う魚屋の店頭に、鴨肉が並ぶことも珍しくなかったと言います。
鴨肉は、古くから日本人が大切にしてきた食材。牛肉や豚肉が食すことが一般的になった明治時代よりも昔から、日本人の貴重なたんぱく源として食べられてきました。中でも琵琶湖湖北産の鴨は美味と名高く、将軍徳川家に献上されたこともあるのだとか。
しかし現在では、鴨肉の供給量は鶏肉の0.001%もありません。鴨肉を食べる日本の伝統的な食習慣は、ほとんど失われてしまいました。
様々な鴨商品をラインナップ
そんな鴨肉文化ですが、今でも長浜では愛される郷土料理です。
市内には“鴨すき”の老舗飲食店が点在するほか、長浜を代表する商品として、全国へ鴨商品を流通させているのが一湖房です。JR長浜駅から徒歩17分。観光地として賑わう黒壁スクエアを抜けた先にある直営店で、お話を伺ってきました。
店内に並ぶ、おいしそうな商品ラインナップを、まずはご紹介いたしましょう。
一湖房の代表商品とも言えるのが「合鴨ロース煮」。2000年の発売開始以来、お取り寄せグルメとして大ヒット。料理研究家・服部幸應さんの著書で紹介されたり、全国の百貨店での取扱も始まるなど、長浜を代表する名品にまで成長してきました。
やさしくあっさりした出汁と濃厚な鴨の旨味がマッチングした「鴨汁そばセット」は、鴨料理の代表格。国産そばで、そば本来の香りと食感も楽しめます。
鴨の旨味がいっぱいに詰まった「鴨みそ」と、「鴨みそ」をベースに滋賀産の唐辛子を刻み入れた「鴨ピリ辛みそ」もおすすめ。白ご飯に載せて食べるだけで、最高のおかずになります。
そしてなんと言っても、国内産の合鴨肉をふんだんに使った「鴨肉ハンバーグ風」。合鴨肉の美味しさが滲み出てくる、絶妙な逸品です。
鶏肉よりも旨味が濃く、牛肉よりもあっさりして食べやすい。そんな一湖房の鴨肉は、オンラインショップでもお取り寄せ可能。ぜひご賞味くださいませ。【→一湖房オンラインショップ】
社長に聞くルーツ。鴨の始まりは、おばあちゃんの味。
鴨肉を軸にさまざまな商品展開をする一湖房。
その事業内容について、社長の川瀬裕正さんに話を伺うと、出てきた言葉が冒頭の言葉でした。
「琵琶湖では昔から、鮎(あゆ)と鴨(かも)は親戚みたいなもんなんです。魚屋で鴨が売られてたんですよ」。
じつは、一湖房の始まりも、鴨ではなく鮎だったと言います。
「もともとは伝統織物の『浜ちりめん』を扱う呉服商でした。京都や大阪の卸先への手土産に、祖母が作った鮎の佃煮を持って行ったら、その味がすごく好評で。『鮎の佃煮を売ってくれないか』と頼まれることが増えたので、私の叔父の野中敬三が呉服商の傍らに始めた食品製造業が一湖房でした」。
23年前に川瀬社長が一湖房に入社。しかし当時は、売上もほんのわずか。そのときに前社長から言われた言葉が「10年で結果が出なければやめよう」でした。
「当時、鮎の佃煮の売上は100万円にいかないほど。これを大きく育てていくには、正直、何から手を付けていいのかわかりませんでした。でも、自信を持って売れる商品があることだけは明確でした」。
想いはシンプルに、「おばあちゃんの味を守りたい」。そのために、美味しさだけでなく、食の安全も追求した商品開発に取り組んでいきます。
「川魚は鮮度が命。冷凍保存したものを使うとどうしても味が落ちてしまう。おばあちゃんの味を守るためにも、新鮮な鮎が手にはいらない秋冬に売る商品が必要でした」。
そこで川瀬社長が試行錯誤の上、辿り着いた答えが“鴨”でした。
「長浜では、鮎と鴨は親戚のようなもの。鴨肉を使って一湖房の名物となるものを作ろうと思ったのですが、川魚と鴨肉では扱いがまるで違う。しかも長浜で長年親しまれていたのは高価な天然の真鴨。無添加でコストを抑え、しかも納得いく味の商品が完成するまでには、7年もかかりましたよ」と笑う川瀬社長。そうして誕生したのが「合鴨ロース煮」。
鴨肉の魅力を最大限に引き出すため、燻製ではなく焼いてから醤油ベースの特製ダレで煮込んだ和風の合鴨ロース。
口にいれると、弾力ある柔らかさとジューシーな旨味が広がります。真鴨に慣れている長浜人の舌もうならせる、長浜を代表する逸品が誕生しました。
「百貨店の催事にも出店させてもらうようになり、地元長浜よりも先に全国区で注目されるようになった感じです。今では、地元の人も湖北の味として贈答品にも使ってくれています」と話す川瀬社長。全国的に認められたことももちろんですが、鴨の本場である地元・長浜で認められたことに、商品としての手応えを感じているようです。
和やかな雰囲気の中に垣間見えるプロ意識。次世代を担える“キーマン”を募集。
現在一湖房では、製造、営業、企画などの型枠にはまらず、マルチに活躍できる人材を募集しています。
「商品が営業をしてくれるから、私たちはそのサポート役。なんでもやっていく中で、その人の得意分野が見つかればそれを生かして活躍の場を広げていくこともできます。私は次の世代を担える『キーマン』になる人材を期待しています」と川瀬社長。
職場の雰囲気を見せてもらうために訪れた調理場では、約10人ほどの人が調理や包装をされていました。
職員の皆さんは口々に「こんにちは!」と、とても気持ち良い挨拶をかけてくれます。
調理場を仕切っている入社13年目の田鍋さん(写真・右)。
「無添加で作るということはただ単に添加物を入れなければいいということだけじゃないんですよね。添加物を入れずに食の安全を守るには、通常以上に調理法や衛生面などに気をつける必要があります」。
調理場にある30以上の鍋がすべて新品同然にピカピカ!
食の安全を守る意識は、こんなところにも表れているのかもしれません。
油の温度を確認しながら「鴨のコンフィ」を作っているのは、先代社長の長男・野中治伸さん。父親の死をきっかけに、会社を手伝うようになったそうです。
催事の出店などは治伸さんが担当しています。
「商品はテレビでもよく紹介されていたし、百貨店との取引もあったから、すでに完成している会社だと思って入ったんです。でも、僕が働いた4年の間でも冷凍技術の進化やネット通販需要の高まりなど、食を取り巻く環境はどんどん変わっていると感じます。仕事は1日単位で考えると同じことの繰り返しのようですが、時代に合わせて変えていくことやチャレンジするべきことはあるので、僕らと一緒に成長できる人に来てほしいですね」と話してくれました。
従業員13人のうち、男性は4人。あとは女性なので、職場は和気あいあいととても楽しそうな雰囲気です。
勤続22年、一番長く勤めているという堀田さんは、「絶対に美味しいと自信を持って作っていたので、商品が世に認められるようになってすごく嬉しいです」と笑顔で話してくれました。
「職場は人間関係がさっぱりしていてすごく働きやすい。子どもの行事や介護など家のことで休む場合も柔軟に対応してもらって助かっていますね」
他の方に話を聞いてみても「仕事に行くのがイヤだと思わない」、「ここに来るほうが家にいるより発散できて楽しい」なんて声も。
お話を聞いた皆さんの勤続年数が平均15年という事実からも、職場の居心地の良さがわかります。
季節ごとの商品開発などは、みんなで試食しながら意見を出し合って進めるそうです。
本物を追求し、鴨のパイオニアとして。
「いま合鴨の飼育業界は短期間でいかに大きく育てるかという流れに動いています。けれど、その育て方では鴨肉特有の旨味や香りが失われ、柔らかな食感になってしまう。鶏肉で説明するなら、ブロイラーと地鶏の違いのような…。日本人は鴨肉独特の食感も楽しむ傾向があると感じるので、3年前から京都の飼育農家さんと一緒に長期間かけて飼育する『合鴨の地鶏化』に挑戦しています」。
通常45日で成長する合鴨を75日かけて飼育することで、赤身に脂がのったおいしい肉になるそうです。
時代に逆行することになっても、本物を追求する姿勢は揺らぎません。
「これはぜひ、ステーキかすき焼きで味わってほしい」と川瀬社長。
「我々にとって鮎は会社の原点として守り続けるもの、鴨はパイオニアとしてこれからも挑戦を続けるもの」と川瀬社長が話された一言が印象的でした。
現状に満足することなく、信念を持って伝統の食文化を発信する一湖房の挑戦。
まだまだ新しいステージが続きそうです。
投稿日: 2017年9月29日
一湖房の求人詳細
企業名 | 株式会社一湖房 |
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募集職種 | 総合職・製造 |
雇用形態 | 正社員 |
応募資格 | 未経験可 |
求める人物像 | 明るくて元気な人、一生懸命な人 |
勤務地 | 滋賀県長浜市三ツ矢元町11-20 JR東海道線長浜駅から徒歩15分 |
勤務時間 | 9:00~18:00(1時間休憩あり) |
給与 | 160,000円~(以後、相談) |
待遇 | 社会保険、雇用保険 |
WEBサイト | http://www.ikkobou.com/ |
メッセージ | 琵琶湖の恵みを季節を通して感じ、それを自分たちのフィルターを通して、みなさんにお伝えできれば…。毎日の食卓が笑顔で元気になれるよう、安心・安全な食品を一緒に作っていきたいと思います。 |
選考プロセス | 1 )本サイト下部のエントリーボタンからエントリー 2 )履歴書・職務経歴書を指定メールアドレスまで送信してください。 3 )書類審査後、採用不採用に関わらず2週間以内にご連絡いたします。 4 )メールにて面談日時を相談の上、決定。 5 )一次面談を実施 6 )面談の結果を全ての方にお知らせ 7 )職場体験 8 )採用決定 |
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